関税はグローバル・バリュー・チェーンの時代では邪魔になるけど、回避策はいろいろあるです

関税はグローバル・バリュー・チェーンの時代では邪魔になるけど、回避策はいろいろあるです

テキサス・インスツルメンツ

プロレスは、相手に派手なパンチやキックを見舞って会場を盛り上げるが、致命的な打撃を与えないのが暗黙のルールだ。
しかし関税の場合、相手国の経済を攻撃するだけでなく、自国や第三国の経済活動も確実にダメージを受ける。
IT(情報技術)革命の進展により、それぞれの工程が切り離され、「グローバル・バリュー・チェーン(全地球的な部品・商品・財・サービスの供給・調達網)」が複雑に形成されているからだ。もはや、一つの国で製品化までの全生産工程が行われて輸出するという時代ではないが、トランプ氏はグローバル・バリュー・チェーンの重要性を理解しようとしない。

 例えば、年間2億台前後の世界出荷台数のうち大半が中国で組み立てられる米アップルのiPhone(アイフォーン)の場合、
主要200社のサプライヤー(供給企業)は中国国内だけでなく、台湾や日本、欧州各国など極めて多様で、
インテルテキサス・インスツルメンツ、3Mといった米国企業も含まれている。半導体やセンサー、モーターなどさまざまな国・地域による多数の部品が、中国で組み立てられて「中国製」として輸出されるが、実態は「メイド・イン・ザ・ワールド」と言えるものだ。「第4弾」の制裁関税が発動されれば、これまで対象外だったiPhoneにも25%の関税がかけられる可能性があり、中国以外の幅広い国・地域の生産活動が打撃を受ける。

 米通商代表部(USTR)が6月17日に始めた産業界からの公聴会では、
米国企業からも追加関税への批判が相次いだ。「メイド・イン・USA」を売り物に、
米国内でスニーカーやスポーツシューズの製造を続けてきたニューバランスでさえ、
今回は、これまでの「関税支持」の姿勢から「反対」に転じた。米国で製造している商品も、靴底などの部材は、中国をはじめとした世界的な供給網に支えられているからだ。